部落差別は今も根強く残っています。「差別の理不尽さを考えてほしい」と自身が受けた結婚差別をきっかけに、講演活動や地区学習会を通して人権の大切さを訴えている山末由紀さんに聞きました。
いつ自分が差別を受けるかは、誰にも分かりません。部落差別の当事者になる一番のきっかけは、結婚だと思います。私自身も夫が被差別部落出身という理由で結婚差別を受けました。私の親戚が夫の出身を知り、彼のことをよく知らないのに、私たちの結婚に猛反対しました。祝福されないことが悔しくて、悲しかったですね。自分の身に振りかかって初めて、部落差別が昔のことではなく今も根強く残っていることや、差別の理不尽さを痛感しました。当時私はおかしいと思いながらも、反論することができずにいました。
そんな時に私たちを救ってくれたのは、私の祖父の言葉でした。「まだそんなことを言いよんのか」と親戚を一喝してくれたのです。祖父が区長だった頃に、地域で結婚差別を受けた当事者の話を聞き、反対する家族を説得したことがあったのだそうです。その一言がなければ私たちは結婚できていなかったかもしれません。そのうち反対していた親戚も、夫の人柄を知り、最終的には祝福してくれるように。祖父の一言は私たちの人生を支え、差別の連鎖も断ち切ってくれました。
夫は小さい頃から差別を受けていたと言います。友達の家に行っても、友達の親から玄関にも入れてもらえず、遊ぶことすらできないことがあったそうです。差別は日常の何気ない会話や振る舞いなどから、親から子へと無意識に連鎖します。この連鎖を断ち切るには、正しい人権感覚を一人一人が身に付けること。そしておかしいことはおかしいとはっきり言うことが大事です。「そっとしておく方がいい」という人もいますが、それでは差別が終わることはありません。「自分には関係ない」という意識が差別につながっているのです。
私たち夫婦は、娘が小学校3年生の時に、被差別部落出身だということを打ち明けました。娘からは「名前を変えて」「引っ越しをしよう」と言われました。しかし、名前を変えても引っ越しをしても戸籍を変えることはできません。現在もインターネットなどで被差別部落の情報が拡散されたり、デマや偏見などが多く発信されたりしています。隠すのではなく、差別をすること自体がおかしいということを伝えていく必要があります。
私の子どもたちは、地区の学習会で部落差別をはじめ多くの人権問題を学びました。どんな問題も、当事者からの話が一番心に響いたようです。現在は、「もし私自身が結婚差別を受けたときは、一度は自分一人で闘いたい。自分がどれだけ差別について勉強できているか確かめたい。もしだめでも一緒に学んで闘っている仲間がいるから大丈夫」と自信を持っています。
子どもが部落差別の問題について、自分の気持ちや疑問を包み隠さず話すようになると、親戚たちも娘に実体験などを語るようになりました。なんとなくあった「触れてはいけないことだ」という意識が、少しずつなくなっていったんです。今ではお互い気兼ねなく話をしています。理解し合えるという安心感が生まれたのだと思います。
皆さんには、地域で開催される講演会などに積極的に参加し、当事者から話を聞くことで、人権について考えるきっかけを作ってほしいです。一人でも多くの人が差別と向き合い、声を上げてくれることを願っています
【問い合わせ先】人権・同和対策課(電話番号0942-30-9045、FAX番号0942-30-9703)
小中学校の授業で同和問題と出会っている若い人ほど、結婚は当事者同士が決めるという考えを持っています。しかし、どの世代にも一定割合の差別意識が残っていることが分かります。
(注意)申し込みは7月19日(月曜)まで。詳細は市ホームページで確認してください
Copyright 2007 Kurume City All Rights Reserved.