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市立の2小学校が閉校 140年の歴史を胸に新たな学び舎へ(令和3年3月15日号)

 市立の下田小学校および浮島小学校は3月末で閉校し、城島小学校と統合します。全国的な少子化の動きの中、2校は市内でも特に児童数の減少が続き、平成に入ってから異なる2つの学年を1学級にする複式学級となりました。その後も減少傾向は続いています。
 子どもたちは集団の中で多様な考え方に触れながら、多くのことを学びます。市は、「生きる力」を育むため、小学校を統合して集団の規模を確保することが必要と判断しました。学校での児童の学習面や生活面の環境の向上を図ります。

明治13年創立 久留米市立下田小学校 下田魂を引き継いで

下田小学校 校長 楢橋閲子さん

 下田小学校は、地域とのつながりが深く、運動会や収穫祭など多くの行事を毎年地域と一緒に作り上げています。相手を思いやり、ふるさとを愛する下田魂が受け継がれてきました。

地域に愛された140年

 下田小は、全校児童38人の小規模校です。毎年、田植えや収穫祭などを地域の協力の下、行ってきました。楢橋閲子校長は「140年間、地域の愛情に包まれながら、共に成長してきた学校です。小規模だからこそ、全学年や地域の人と一緒に過ごすことが多く、そうして育まれた強い絆を感じます」と話します。恒例行事の田植えで使用する田んぼは、「子どもたちに農業体験をさせてあげたい」という保護者の温かい思いから、学校敷地内に造られました。閉校記念の航空写真の撮影には、100人以上が参加しました。そんな思いやりの心は、児童にも代々受け継がれています。伝統の「フレンドリー遊び」は、学年を混ぜたグループ活動で、最後に友だちの良さを伝え合います。学年を超えてお互いを尊重し合い、思いやる姿勢が根付いています。

最後の歴史を築いた1年

 「下田っ子で良かったとみんなが思えるようにすることを目標に、教職員、地域、子どもたちが一丸となって思い出作りに取り組んだ1年でした」と楢橋校長は話します。コロナ禍でも、これまで行ってきた行事や集会を、感染防止の工夫をしながら全て開催。全校バスハイクや下田小お別れ会などは、子どもたちのアイデアを生かしながら作り上げました。
 最後に楢橋校長は、巣立つ子どもたちに向けて、「4月からは新しい学校生活が始まります。多くの友だちと過ごす楽しさを味わって、統合のプラス面を実感してほしいと思っています。相手を思いやり、ふるさとを愛する下田魂を、これからも大切にして、頑張ってください」と子どもたちにメッセージを贈りました。

思い出とこれから。下田小児童メッセージ

下田小2年 榎本吏玖君
 学年が違っても仲良くしてくれる下田小学校のみんながとても好きです。4月から城島小学校へ行くことは、少し緊張するけど、交流授業で友達もできたので、楽しみな気持ちが大きいです。今まで通り頑張ります。
下田小4年 古賀菜瑠美さん
 地域の人たちと一緒に人文字を作り、航空写真を撮ったことが良い思い出です。4月からは不安もあるけれど、同学年の友達がたくさんいるので、楽しみな気持ちもあります。楽しい思い出を作っていきたいです。
下田小6年 野口夏希君
 下田小学校の思い出は、運動会で披露した応援合戦です。1カ月間みんなで練習して絆を深め合うことができました。閉校するのは寂しいですが、下田小での思い出を忘れずに、今後も頑張っていきたいです。
下田小6年 古賀果梨さん
 地域の人と行う活動もたくさんあり、顔見知りでアットホームなのが下田小の良いところ。地域に愛される下田小学校140年の歴史に幕が下りるのは悲しいですが、最後の卒業生として誇りを持って卒業します。

下田小学校の沿革

明治
13年 芦塚村出丸19番地の2芦塚小学校創立
14年 城島小学校芦塚分校に
19年 芦塚簡易小学校と改称
24年 芦塚尋常小学校と改称
30年 下田尋常小学校と改称 校舎を現在地に新築
昭和
16年 下田国民学校と改称
22年 下田小学校と改称
23年 給食室を新築
28年 大洪水により大きな被害を受ける
30年 城島町・江上村・青木村 を合併し、城島町発足
31年 完全給食を実施
34年 校舎を新築し、鉄筋コンクリート2階建てに
49年 講堂を壊して、体育館を新築
55年 創立100周年記念式典開催
57年 新プールを新設
63年 新校舎を新設
平成
8年 テレビ、ビデオを普通教室に設置
12年 創立120周年記念式典開催
17年 城島町が久留米市と合併
22年 デジタルテレビ・電子黒板を設置
令和
3年 3月31日閉校

明治6年創立 久留米市立浮島小学校 ふるさとに守られて

浮島小学校 校長 野田亮一さん

 浮島小学校は、校庭が全面芝生の自然に恵まれた環境にあります。明治初期から続く歴史のある学校です。

豊かな自然を生かした学び

 浮島小は、全校児童22人で、全学年2学年ずつの複式学級です。平成19年に初めて複式学級となり、以降、現在まで続いています。今後も、年々、児童数は減少していく見込みでした。
 学校は豊かな自然の下、地域の協力を得て、一年を通しさまざまな体験活動をしています。田植えやエツ漁体験や地域との合同運動会など数多くの学校活動を保護者、地域が一丸となって支えます。野田校長は「最後の一年だからこそ、今年度はコロナ禍であっても、対策をするなどの工夫をして、できる限りの活動をさせてあげたかった。学校や保護者だけでなく、地域の惜しみない協力があったからこそできました」と話します。地域の温かいまなざしを受け、子どもたちはふるさとの良さを学んでいきます。

少人数の良さが伝統にも

 複式学級では、学年ごとに先生が交互に授業を行います。一つの学年に先生が直接指導するときは、別の学年は、自分たちで考えながら学習を進めます。野田校長は「少人数の良さはきめ細かい指導ができることの他に、自分たちで学ぶ姿勢が確実に身に付くことです」と話します。その力は、学年を超えた活動でも生かされます。言われなくても、上級生が下級生のサポートに進んで取り組むのは浮島小の伝統です。野田校長も「城島小に行っても、浮島小で身に付けた伝統の学びの力は、ぜひ持ち続けてほしい」と語ります。
 統合について野田校長は「子どもたちにとってプラスになることが大事です。人数が多い中で、他人の意見も聞いて学んでいくことは良い経験になると思います。交流授業で児童から、新しいつながりができた、行くのが楽しみという話を聞きました。浮島小で蓄えた力と地域の思いが支えになると信じています」と結びました。

思い出とこれから。浮島小児童メッセージ

浮島小2年 木稲喜一君
 浮島小学校での思い出はドロリンピックでみんなで泥まみれになったことや、学年を超えて昼休みにサッカーをしたことです。4月から新しい学校で不安もあるけど、友達をたくさん作りたいと思います。
浮島小4年 鈴木花奈さん
 浮島小学校での一番の思い出は持久走大会です。毎年速くなって、目標も達成したのでうれしかったです。交流授業では、大人数でサッカーができて楽しかったです。4月からは友達作りを頑張りたいです。
浮島小 6年 江原陸人君
 今年で卒業になりますが、自然が豊かな浮島小学校が好きです。歴史を感じる校舎が、これから使われなくなることが少しさみしいなと思います。中学校に進学しても元気に頑張りたいと思います。
浮島小6年 吉武旺訓君
 浮島小学校の思い出はエツ漁体験です。実際に船に乗り、網で取るところを間近で見ました。浮島小学校は少人数なので、発表する場も多かったのですが、その経験を今後も生かしたいです。

浮島小学校の沿革

明治
6年 創立。私立新家小と称し、第9代菊池要三郎宅を借りて授業
13年 浮島分校設立
19年 浮島小学校簡易科と改称
23年 浮島尋常小学校と改称
34年 現在地に校舎移転
昭和
16年 浮島国民学校と改称
21年 浮島小学校と改称
28年 大洪水により大きな被害を受ける
32年 学校用地北側埋め立て
41年 鉄筋2階建て校舎改築
45年 プールを新築
47年 体育館を新築
48年 創立100周年記念。校門改築、運動場緑化
59年 浮島明神350周年を記念して、校旗制作
平成
10年 正門を移設
17年 城島町が久留米市と合併
19年 普通教室を複式教室へ改修(1・2年)
26年 創立140周年記念式典開催
27年 平成27年度優れた「地域による学校支援活動」推進にかかる文部科学大臣賞受賞
令和
3年 3月31日閉校

期待膨らむ新たな学校生活

 今回の下田・浮島・城島の統合は、子どもたちにとってより良い教育環境を整えるための取り組みです。

地域も共に考える

 市教育委員会は平成31年1月、下田小と浮島小を城島小に統合する計画案を作成。3校が1校になると、全学年が複数クラスの望ましい学校規模が実現します。市教委は城島町5校区で説明会を開催。12月からは、対象小学校で勉強会や意見交換会を行いました。保護者や地域、市教委で統合の目的や子どもたちへの影響について話し合いました。子どもたちにとって最も良い選択は何か、協議を積み重ね、統合が決定。昨年7月、3校に保護者や地域、校長、市で構成される「統合準備協議会」を設置。各校、統合に向けて、スクールバスの運行や交流授業などの協議を進めてきました。

新しい友達と笑顔で

 昨年10月から3校の児童が一緒に学ぶ交流授業を行いました。授業の初めに自己紹介などをして、緊張していた児童もすぐに笑顔に。2校の児童には、城島小の児童が学校を案内しました。初回は2時間、次は給食まで、3回目は丸1日、最後は2日続けてと少しずつ時間を長くする配慮も。交流授業は3月まで計9日間行われました。アンケートで児童の多くが「いろんな意見が出て授業が楽しかった」、「新しい友達ができてうれしかった」と答えています。新しい学校生活に向け、子どもたちは前へ進んでいます。

【問い合わせ先】学校教育課(電話番号0942-30-9217、FAX番号0942-30-9719)

これから一緒に学ぶみんなへ

城島小5年 ライランダー杏奈さん
交流授業では、勉強の他にもいろんな話をして打ち解けました。4月からはどの学年にも新しい仲間が増えます。緊張していると思うので、最高学年としてみんなでサポートしていきたいです。

全ては子どものために

城島小学校 校長 樋口恵子さん

 統合に向けて、「子どものために一番いいこと」を考えて準備を進めています。下田小・浮島小は、保護者や地域に大切にされ、長い歴史を刻んできました。城島小も同じです。3校は4月から新たなステージへと向かいます。児童が大きな変化の中で、安心して過ごしていくことができるよう、本校職員は、精いっぱいの準備をしています。その努力はこれからも続きます。交流授業は、子どもたちにとっていい出会いとなりました。それでも、不安に思っている人もいます。城島小の子どもたちは、友達になるのを楽しみにしています。心配なことは、みんなで解決していきましょう。一緒に城島小学校の新しい歴史を始めたいと思っています。

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