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シリーズ 共に生きる 第6回(令和3年2月15日号)

その子の特性を生かして

 自閉スペクトラム症の人たちにとって「生きやすい久留米」を目指して、支援の広がりや実践力の向上を目的に活動をする松尾博子さんに話を聞きました。

松尾博子さん
「gocochi-Next」代表。平成24年、障害のある子どもをもつ親の会「gocochi」を設立。31年に保護者と支援者のグループ「gocochi-Next」へ。昭和45(1970)年生まれ。

伝え方を変えるとできることが

 自閉スペクトラム症は、対人関係が苦手だったり、強いこだわりを持ったりする特徴があり、発達障害の一つといわれてます。私の活動のきっかけは、当時小学4年生の息子の行動でした。15分の通学に2時間40分もかかったんです。途中、道に座り込んで歩かないんですよ。「どうして言うことを聞かないの」と焦りましたね。学校で何があるのか、何時に帰れるのか、先の見通しが立たないことで動けなかったんです。
 専門家の先生に相談すると「言葉ではなく、実際に見て伝わる方法がいいよ」と言われました。絵カードや写真を使って次にする行動を伝えると、息子は少しずつ行動を切り替えることができるようになりました。それまで、言葉だけで伝えようとして、安易にコミュニケーションを取っていたことを申し訳なく思いましたね。

その子のこだわりを尊重

 中学生になった息子は、友達や制服が変わるなど環境の変化になじめず、学校に行きたがらなくなりました。ただ一つだけ興味を示したのが給食を届けるトラックでした。これに気付いた先生やスクールソーシャルワーカー、作業療法士の皆さんが、毎日トラックを見に行く時間を作ってくれたんです。それから息子は学校に行くように。その子の特性を無理やりに変えようとするのではなく、尊重することで生活の支障を減らすることができます。周りの人が特性を正しく理解することで、その子や親にとって「生きやすく」なることを知ってほしいのです。

支援の方向性を合わせる

 自閉スペクトラム症への理解は、まだまだ進んでいません。言葉掛けで伝える人、視覚的に伝える人など支援の方法がバラバラでは、かえって本人を戸惑わせることに。医療や福祉、教育など多岐にわたるからこそ、関わる人の知識やスキルの差で違いが出ないように、立場や職域を超えたつながりが重要なんです。障害がある人が支援に合わせるのではなく、その人に合った支援の方向性を見いだすことで「生きづらさ」を軽くできます。時間はかかるかもしれませんが、多くの人が自閉スペクトラム症の人の特性を正しく理解し、一人一人に合った支援を広げていくことで、障害がある人に寄り添うことができると信じています。

【問い合わせ先】障害者福祉課(電話番号0942-30-9035、FAX番号0942-30-9752)

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