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孤高の画家再び(令和3年1月1日・15日合併号)

生誕130年を記念して10年ぶり 久留米で島野十郎展を開催

島野十郎(1890年〜1975年)

久留米市出身。享年85歳。徹底的な写実による独自の絵画は、没後に評価が高まり、今では幅広い人気を得ています


 1月20日(水曜)から久留米市美術館で「生誕130年記念 島野十郎展」が開催されます。2011年に当時の石橋美術館で開催され、大きな反響があった里帰り展以来10年ぶりの回顧展です。代表作を含む115点を初期から晩年までの5章構成で紹介します。学芸員の中山景子さんに見どころを聞きました。

孤独と旅を愛した生涯

 島野十郎は1890年に久留米市で生まれ、東京帝国大学(現東京大学)農学部水産学科を首席で卒業。周りの期待に反し、念願だった画家の道を選びます。生涯独身を貫き、晩年は千葉県柏市の人里離れた田園にアトリエを構え、絵の制作に専念。世間の評価を気にしない姿勢で、作品はささやかな個展のみで発表していました。晩年は日本中を旅しながら独自の写実を深めていきます。ろうそくや月、太陽をテーマとした作品には、仏教などに裏付けられた独自の思想による、光と闇の追求が背景にあると考えられています。ひたすら絵と向き合っていた野十郎のアトリエには、道場のような張り詰めた空気が満ちていたといわれています。制作への情熱と妥協を許さない強い精神から生み出される作品のみならず、その生き様も多くの人を引きつけています。
 今回の展覧会には、近年新たに発見された作品や所蔵館以外での展示が初めての作品もあります。

根底にある仏教的思想

 文芸や禅に深く傾注した長兄の宇朗の影響で、野十郎は10代の頃から仏教への深い関心がありました。「絡子をかけたる自画像」では禅僧のような衣装を身に着けた姿を描き、宗教への関心が深かったことが伝わります。
 絵の描き方にも独特な特徴があります。「菜の花」では花の一本一本、石ころまでもはっきりと描かれており、野十郎はこの一つ一つを「神」と見て描いていたといわれています。中心となるものをはっきりと描き、周りのものを背景としてぼかすように描くのではなく、画面の隅々まで均等に、緻密に描写をしています。そうして描かれた作品は、見る人を作品に引き込む不思議な魅力を持っています。
 野十郎を長年研究する福岡県立美術館の学芸員・西本匡伸氏による美術講座も開催。申し込み方法など詳しくはホームページで確認してください。新型コロナ対策を徹底して開催しています。来館時には必ずマスクの着用をお願いします。

【問い合わせ先】久留米市美術館(電話番号0942-39-1131、FAX番号0942-39-3134)

東京で「久留米をめぐる画家たち」を開催

 東京都にある公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館(旧ブリヂストン美術館)で、久留米出身の画家を取り上げた企画展「青木繁、坂本繁二郎、古賀春江とその時代 久留米をめぐる画家たち」を1月24日(日曜)まで開催しています。

 上京して活躍した青木繁、坂本繁二郎をはじめ、地元久留米で後進の育成に貢献した松田諦晶などの作品が紹介されています。島野十郎の作品も展示されます。長らく非公開だった青木繁の学生時代のスケッチも展示。久留米に生まれた画家たちのつながりや作風の違いを感じられる企画展です。

開催情報

  • 会期=1月20日(水曜)から4月4日(日曜)までの10時〜17時。入館は16時30分まで。月曜は休館。
  • 入館料=一般1,000円、65歳以上700円、大学生500円、高校生以下無料。前売り券600円はチケットぴあ、ローソンチケットで販売

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