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シリーズ 共に生きる 第3回(令和2年9月15日号)

単身高齢者の「孤立」を防ぐ

井鍋侑佳さん
高齢者が「住み慣れた地域で暮らし続けることができるまちづくり」を目指し、相談や支援を行う。社会福祉士・精神保健福祉士。昭和59(1984) 年生まれ

 日本の人口の約28%が高齢者の時代。一人暮らしの高齢者も増加しています。単身高齢者が直面する問題について、久留米中央地域包括支援センターの井鍋侑佳さんに聞きました。

周りに迷惑を掛けたくない

 担当する日吉、篠山、南薫、荘島、長門石校区は、市内でも単身高齢者が多い地域です。配偶者と死別した、家族が遠方にいる、結婚していないなど単身の理由はさまざまです。物忘れが進行したり、体調が悪くなったりしているのに「今まで一人で生活してきたから、他人の支援は必要ない」、「子どもや親族に迷惑を掛けたくないから、そっとしておいてほしい」と、支援を拒否するケースも増えています。近所の人が単身高齢者が住んでいることを知らないケースも多いですね。

急増する「セルフネグレクト」

 生活環境や栄養状態が悪化しているのに、改善しようとする気力を失い、周囲に助けを求めない状態を「セルフネグレクト=自己放任」といいます。自分自身で人権や人としての尊厳を侵害している状態です。単身高齢者が陥りやすく、ごみ捨て、入浴や着替え、部屋の片付け、食器洗いや調理、通院などが面倒になります。自らの心や体のケアができなくなり、最悪の場合「孤立死」を引き起こすことも。この状態が長く続けば続くほど「もうこのままでいい、放っておいて」という気持ちになって、人との交流を絶ってしまいます。周りの人も「地域のイベントに誘っても、本人が断ってしまう」や「どう声をかけていいのか分からない」など、次第に交流が減ってしまいます。社会参画への機会が少なくなることで、「生きがい」だけでなく「社会性」を失い、「孤立」を生み出してしまうのです。人として健やかに生きる権利を守るためにも、周りの気付きや支援は欠かせません。

高齢者の衰えを正しく理解して

 仕事や子育てを退いた高齢者は、人とつながりを持ち、地域の中で必要とされることで「生きがい」や「社会性」を持つことができます。知らず知らずに陥るセルフネグレクトを防ぎ、早期支援につながることも。そのためにも「地域の一員」、「地域に必要な人」と思う周りの姿勢こそが大事です。健康管理を始め、介護保険や成年後見制度などの支援を受けることで、これまでの生活を継続することができます。支援を受けることは、迷惑を掛けることではありません。周りの人が高齢者の身体的・認知機能などの低下を正しく理解し、認識することで、誰もが生きがいを持ちながら、健康で穏やかな高齢期を送ることができると思います。

【問い合わせ先】長寿支援課(電話番号0942-30-9038、FAX番号0942-36-6845)

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