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7月は同和問題啓発強調月間(令和2年7月1日号)

社会の不安が大きいときに顔を出す差別意識

 生まれや育った地域を理由に差別を受ける人がいます。同和問題を解決するために、何が必要なのでしょうか。「久留米地区企業内同和問題研修推進委員会」会長で、企業として差別解消に取り組んでいるアサヒシューズの谷川晃一さんに話を聞きました。

谷川晃一さん

福岡市出身。平成元年アサヒコーポレーション(現アサヒシューズ)入社。
生産本部長、管理本部長などを経て現在同社監査役。
令和2年4月より久留米地区企業内同和問題研修推進委員会会長

今もなお存在する差別

 私が同和問題に関わったのは、勤務しているアサヒシューズの管理部門に配属となった平成26年から。久留米地区企業内同和問題研修推進委員会(以下、企同推(下記用語解説注意1))のメンバーになったのがきっかけです。それまで一般的な知識はありましたが、活動の中で当事者の意見や考えを直接聞き、今なお同和問題が存在することを痛感。被差別部落の人と結婚しようとして親族などから反対された結婚差別の現状を知りました。同時にそれを乗り越えようとする強さと現在でも苦しんでいる人がいる差別の不条理さを感じています。
 久留米市でも差別落書き事件などが起きています。気付いていないだけで、今も部落差別はあるのです。理解しているつもりで、理解していないことは誰しもあり得ることです。知ることで、今までなかった考え方や感情が生まれます。差別があることを、まずは正しく知る、そのためには改めて学ぶことが大事です。

企業と同和問題

 企同推の活動の中でも特に力を入れているのが「公正な採用選考システムの確立」です。そのため全国統一応募用紙(下記用語解説注意2)が生まれました。面接でも、本人の適性や能力とは関係ない質問はしないよう、事前に面接官が互いに確認します。自分が発した言葉が、相手に大きな苦痛を与えてしまうかもしれません。何気なく使っている言葉が指摘されるまで差別につながる言葉と知らなかった、気付かなかったことがあるためです。
 企業にはさまざまな人がいます。同和教育も地域差があるため、社員の意識も異なります。そのため、新人研修のテーマに同和問題を取り入れて、正しい認識を持ってもらうようにしています。他にもLGBTに対する偏見、ハラスメントなどのさまざまな人権問題が起こっています。企同推でも人権問題を理論だけでなく、当事者に話を聞くなどして学んでいます。見えているものだけが全てではありません。人それぞれの環境や背景によって同じ空間にいても見えるものは違います。自分が気付かないだけで差別に苦しんでいる人がいる、そのことは、常に意識しておく必要があると伝えています。

時代とともに姿を変える差別

 差別の形も時代とともに様変わりしています。インターネットでの差別書き込みは、匿名性が高く、手軽に投稿できます。見た人たちは安易に情報を信じ、差別であると認識・指摘できないまま誤った情報を拡散。影響を想像できない人たちによって、差別は一気に広がっていきます。広がった情報は記録され、誤った内容を消すことは困難です。自分が被害を受けるかもしれないし、逆に誰かを差別することになるかもしれない危険があります。何が正しい情報なのか、冷静な判断をすることが必要です。

一人一人が想像力を持つ

 差別意識は、社会の不安が大きいときに表に顔を出すと考えています。
 新型コロナウイルスの発生は、私たちにこれまで経験したことも、考えたこともない不安を引き起こしました。結果、医療従事者などへの差別が生まれました。私たちは、自分は批判されない安全な所にいて、そうではない誰かを差別してしまうことがあります。こちらの岸から向こうの岸を差別する、この図式はさまざまな差別の縮図であるようにも思います。誰も見ていない、自分さえよければいい、などという考えに流されず、一人一人が自分の行動の結果、どうなるかという想像力を持つことが重要だと感じます。
 現在もさまざまな人権問題が起きていることを知ってください。自分の周りでも起きているかもしれません。そして自分はもちろんですが、身近にいる大事な人が被害者の立場だったらどうなるだろう、想像することで差別はなくすことができるはずです。

【問い合わせ先】人権・同和対策課(電話番号0942-30-9045、FAX番号0942-30-9703)

用語解説

(注意1)久留米地区企業内同和問題研修推進委員会
 昭和52年、全国で企業に「企業内同和問題研修推進員」を設置する取り組みが始まりました。これを受け昭和55年に同和問題解決に向け効果的な研修の実施と積極的な啓発活動を推進するために設立されました。久留米市、うきは市、大川市、大木町、大刀洗町の企業約200社が参加。年3回の研修や各種人権セミナーを開催しています。

(注意2)全国統一応募用紙
 長い間、企業の応募には独自の「社用紙」が使用されていました。信仰する宗教、親の職業や年収など本人の適性や能力とは無関係の内容を詳細に記入させることがあり、面接時の質問も同じようなものでした。就職差別解消に向け立ち上がった人たちの努力により、昭和48年に「全国統一応募用紙」制度が整備され、今も使用されています。

同和問題啓発強調月間 特別パネル展

 同和問題啓発強調月間に合わせて、特別展を開催します。憲法に込められた人権尊重の思いから、部落差別解消推進法に懸ける願いを考える展示です。

  • 期間=7月1日(水曜)から30日(木曜)までの9時30分〜17時。23日(祝日)、24日(祝日)は休館
  • 会場=えーるピア久留米

【問い合わせ先】人権啓発センター(電話番号0942-30-7500、FAX番号0942-30-7501)

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