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久留米市美術館 展覧会 白馬のゆくえ(令和2年6月15日号)

日本洋画50年の軌跡

明治から昭和の戦後まで小林萬吾の歩みと名画でたどります

市美術館で、6月20日(土曜)から展覧会「白馬のゆくえ 小林萬吾と日本洋画50年」が開催されます。小林萬吾という画家を通して、日本洋画界に新風を吹き込んだ白馬会とその後の歴史をたどる展覧会です。市美術館学芸員の佐々木奈美子さんに聞きました。

小林萬吾

慶応4(1868)年香川県出身。黒田清輝らが設立した絵画団体「白馬会」に参加。東京美術学校西洋画科卒業。40代で文部省の命を受けヨーロッパ留学。帰国後は、文展に毎年作品を発表する傍ら、東京美術学校や私塾「同舟舎」で多くの画家を育てた。享年79歳

知られざる作家、小林萬吾

 小林萬吾は、本人に関する伝記や文献が少なく、他の作家の記述の中で触れられる程度でした。しかし、佐々木学芸員は「小林は、日本洋画界の中心近くにいて、彼の歩みは洋画の歴史に間違いなく重なります。これまで顧みられてこなかったのが不思議です」と話します。小林は、師事していた黒田清輝をはじめ、さまざまな人と関わりがありました。東京美術学校の生徒や彼の弟子には牛島憲之、野見山暁治など個性豊かな次世代の作家もいました。小林は面倒見が良く、仲間から慕われていた人物だったと言います。今回の展覧会は、知られざる作家、小林萬吾を紹介するとともに、彼が出会った多くの画家たちの足跡にも触れることができる貴重な機会です。

白馬会と東京美術学校

 明治28年、小林は黒田清輝に弟子入りします。黒田がもたらしたヨーロッパの絵画技術と温和な外光表現は、多くの若い画家を魅了。黒田は久米桂一郎らと自由に作品を発表する場として、明治29年に「白馬会」を結成しました。小林も創立メンバーとして関わります。同時期、東京美術学校に西洋画科が設立され、光を求める流れが主流となっていきます。「白馬会」は明治43年まで13回開催。小林は第1回展から全てに出品。東京美術学校の学生だった青木繁や藤田嗣治らも出品していました。

展示作品について

 「花鈿」は、小林が円熟期を迎えていた昭和2年の作品です。佐々木学芸員は「絵の中の女性が何かを凝視して別の方向を見ているという構成の作品は他に類がありません。作品には描かれていませんが、女性が鏡を見て鈿の位置を確かめているように見えます」と話します。見る者の想像力がかき立てられるようです。小林の作品は「花鈿」を含め23点展示されます。彼の作品を郷里以外でまとめて見ることができるのは、この展覧会ならでは。他にも、黒田清輝の「読書」や藤島武二の「蒙古の日の出」など白馬会のメンバーに加え、児島虎次郎の「登校」など東京美術学校の仲間や後輩作家の作品合わせて約120点を展示します。黒田らが持ち込んだ明るい屋外の光にそれぞれの作家がどのように取り組み、日本ならではの油絵を生み出したのか、その流れを5部構成の展示から感じることができます。

【問い合わせ先】久留米市美術館(電話番号0942-39-1131、FAX番号0942-39-3134)

開催情報

  • 会期=6月20日(土曜)から8月23日(日曜)までの10時〜17時。入館は16時30分まで。月曜は休館。8月10(祝日)は開館。受付は1階
  • 入館料=一般1,000円、65歳以上700円、大学生500円、高校生以下無料。前売り券600円。チケットぴあ、ローソンチケットで販売

鑑賞のおともに

 今回、コロナ感染防止対策のため、関連イベントは行いませんが、大人も子どもも楽しめるワークシートがあります。

【あなたの好きな作品に投票】
日本洋画の歴史を学ぶことができるワークシートを来場者全員に渡します。展示の内容をクイズ形式で楽しみながら展覧会を回り、最後は好きな作品に投票できます。投票場所は石橋正二郎記念館。投票結果は、市美術館のFacebookで公表予定です 

7月18日(土曜)から開催予定の「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」は中止になりました

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