トップ > 広報くるめ > 第47回 じんけんの絆

第47回 じんけんの絆(令和2年3月15日号)

誰のためでもなく自分のために

 にこにこ会は、介護経験者が認知症の本人や介護家族の悩みに寄り添うおしゃべり会などを開いています。活動で感じた認知症にまつわる人権について理事長の岩坂茂子さんに話を聞きました。

偏見は本人・家族・社会にも

 私たちにこにこ会には、疲れ切った介護家族が表情を失って相談に来ます。「あなたは十分頑張っていますよ」とたたえると、涙を流し、たくさん話をして少し落ち着くんです。その様子は会を立ち上げた25年前と変わりません。介護保険や多くの施設が整備されても、認知症は恥ずかしいという偏見や「発症したら何も分からない」「親は子が面倒を見て当たり前」という誤った思い込みが今も変わらず社会にあり、治療や介護を難しくしていると感じます。
 認知症を100パーセント予防する方法はありませんが、「発症したら終わり」でもありません。予防のために少し生活を整える。発症しても病気と折り合いをつけながら豊かに生きる。先輩達の知恵を学び、伝えていきたいです。

説得ではなく理解と共感を

 アルツハイマー型認知症が進むと、数十年間の記憶が壊れることがあります。そんな時、本人は数十年前にタイムスリップしているのかもしれません。だとしたら水洗トイレの使い方は分かりません。家は木造平屋で、娘はまだ20歳のはずです。「私のことをお母さんと呼ぶこの女性は誰なの」と思うでしょう。もちろん瞬時に近所のおばさんを演じられなくても、本人と一緒に昔の暮らしを想像できれば「娘の顔を忘れたのか」と怒らなくて済むかもしれません。実際、忘れるだけで周りを傷つけることはありません。「何度同じことを言わせるの」と怒鳴るより、「いいよ忘れても。大事なことは私たちが覚えているから」と伝えてあげられたら、その人は安心して今を生きられるかもしれない。そういう周囲の柔らかい対応が薬よりも効くことがあると専門の医師も言います。

全ての人が老いていく

 最近メディアで認知症や介護についての議論が盛んです。予防とばかり言い過ぎて、「発症した人は予防を怠ったからだ」と見られがちです。でも、それは違います。誰もが年を取ると認知症になる可能性があるのです。
 発症した本人は認知症と共に生きていこうと決心する。周囲の人はそれを手伝う。理解・共感しながら、人が人を尊重できるようになればと思います。誰のためでもなく、自分が老いた時にそうあって欲しい。より良い社会になるよう、多くの人に私たちの声を届け続けていきます。

【問い合わせ先】長寿支援課(電話番号0942-30-9207、FAX番号0942-36-6845)

▲このページの先頭へ