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第45回 じんけんの絆(令和2年1月15日号)

誤った「イメージ」が生む差別

 偏見、差別に悩むHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染した患者が多くいます。国立病院機構九州医療センターで社会福祉士として患者の対応をしている首藤美奈子さんに話を聞きました。

隠して生活するつらさ

 14年前に福岡県の社会福祉士として働き始めたことが、HIVと関わるきっかけでした。病気に対する「誤解」によって差別が生まれていること、感染を隠して生活せざるを得ない人が想像以上に多いことを知り、社会の理解の足りなさを痛感しました。差別や偏見が怖くて家族にさえ打ち明けられずに苦しんでいる人がいます。このつらい思いをしている人たちの力になりたいと、患者の相談、治療のフォロー、研修を担当するようになりました。患者さんは仕事や医療費のことなど、さまざまな不安を抱いています。そこに私たち社会福祉士が寄り添い、自分で解決する手伝いをしています。

偏見は医療介護の現場にも

 HIVはウイルスが白血球に感染し、体の免疫力を低下させますが、感染力は弱く、日常生活で感染することはありません。適切な治療を行うことで、健康な人と同じ生活をし、平均寿命まで生きることができます。しかし偏見や差別はいまだに根強く残っています。HIVで仕事を少し休んで復帰しても、再び休職を促されたとか、「同じトイレを使うな」と罵声を浴びせられた、などという話を聞きます。医療の現場でもたびたび差別に直面します。患者の転院やリハビリを他の医療・介護機関に依頼すると、HIVを理由に断られることがあります。最近も高齢の患者の介護サービスを数十カ所断られました。こうした差別の多くは、入浴でうつるかもしれないなど、不十分な知識や誤ったイメージによるものです。医療従事者や介護従事者でさえそういう人がいます。一度ついた誤ったイメージを拭い去るのは難しいですね。

知ることを意識

 全国的に毎年新たに報告される感染者数は減っているのに、福岡県では減っていません。しかも重症化して見つかることが多いのです。感染者の増加を防ぐには予防や啓発をしていくことがとても重要。最近、研修の依頼が増え、少しずつ理解が進んでいると感じます。
 HIVは正しい知識があれば、差別や偏見が生まれるような病気ではありません。他の病気にも誤ったイメージから偏見が生まれるものはたくさんあります。一人一人が正しく知ることを意識し、それに基づいた行動ができるようになってほしいです。

【問い合わせ先】保健予防課(電話番号0942-30-9730、FAX番号0942-30-9833)

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