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2020 私の新春メッセージ(令和2年1月1日号)

 新時代の幕開けとなった「令和」。昨年も多くの人たちがそれぞれの分野で活躍をしてきました。その中から4人の市民の皆さんに、活動の思いや新年に向けての抱負を聞きました。

「Restaurant Spoon」オーナーシェフ井上勝紀さん

「廃棄フルーツに価値を」料理人として課題に向かう

 平成24年に店を開いて9年目。田主丸駅のカフェ「カパテリア」のメニュー監修をしたり、外国人の観光客を呼び込んだりと、地域で料理人としてやれることを頑張ってきました。
 最近「サスティナブル」という言葉をよく聞きます。社会を持続可能なものにしようという動きは世界で進んでいます。例えば、マグロやウナギは、乱獲で将来食べられなくなると言われていて、私たちの食卓も例外ではありません。
 住んで知ったのですが、田主丸近辺で出る廃棄フルーツは、巨峰が年間50トン、柿は10倍の500トンもあるんです。これをなんとかしたいと、この数年、さまざまな加工を試し、商品作りを進めてきました。中でも巨峰の白ワイン蒸しは即完売するほどの人気商品に。食品ロスの問題をお客さんに伝えられる良い機会になっています。
 昨年、廃棄フルーツの商品化を支援してくれる施設や企業と出会い、取り組みが大きく進み始めました。蓄積したノウハウを注ぎ込み、柿のシロップ煮やジャムなどを開発中です。今年、福岡市で大規模な展示・販売を予定しているんですよ。
 「無価値な物に価値を生み出す」。農家と消費者の両方と接する料理人だからこそできること。無駄になっている宝の存在を生産者の皆さんに知ってもらう。長期的課題に対して私にできることを考え、実現できれば社会貢献につながるはずです。これからも地域の皆さんと共に田主丸で頑張ります。

久留米信愛短期大学地域参画推進センター長 新井真実さん

老若男女楽しめるダンスで地域をつなげる

 小さい頃からクラシックバレエやダンスを経験し、東京で舞踊学、身体教育学を学びました。平成28年から久留米信愛短期大学の幼児教育学科で、幼児の運動に関する指導方法などを教えています。今までに学生たちとさまざまなコミュニティダンスを考案してきました。
 小さい子どもが、じだんだを踏む。こういった自然な感情を表す動作を、ダンスに取り入れることで、自分らしさを表現できるコミュニケーションになるんです。経験や年齢、性別、障害の有無など関係なく誰でも楽しめるダンスをツールとすることで、地域コミュニティーを作るきっかけにもつながると考えています。
 昨年は食育を目的とした動画「くるめさん、ぐるめさん」の振り付けを担当しました。小さな子どもから高齢者まで誰もが楽しめることを大切にしながら、学生たちと久留米の農産物をイメージした動きを考えて取り入れました。動画だけでなく、学生たちと農業まつりなどでも披露しました。学生たちは、ダンスを通じてさまざまな人と関わることができて楽しいと言ってくれました。
 ダンスには、創る、踊る、見る、表現者を支えるという四つの喜びがあります。これからは創る喜びをもっと広げていきます。その過程で想像力、表現力、個性を生かし合う体験ができる場を作りたいです。多様な人が関われるようにして、地域ならではのダンスの制作などをプロデュースしていきます。

古希で明善高校を卒業 熊谷美重子さん

何歳からでも学べる知らないことを知る楽しさ

 「学校に行ってないね」。履歴書を出した時に言われた言葉が、ずっと心のどこかに引っ掛かっていたのかもしれません。平成31年3月、70歳で明善高校の定時制を卒業しました。これは一つのけじめだと思います。
 中学卒業後は、家計を支えるために働きながら、看護学校に通い看護師免許を取得。40年間勤めました。結婚後は、夫の家業を手伝ったり、夫婦で小料理店を営んだりした時期もありました。ところが、平成13年に事故で夫と死別。1年くらいは何をする気にもなれない日々の繰り返しでした。今日は何をして過ごそうかと考えた時、ふとひらめいて、気がついたら高校に電話していました。高校に行きたい、もっと勉強したいという長年ため込んでいた思いがあふれてきたんだと思います。誰にも相談せず決めたんですよ。
 介護施設で働きながら高校に通いました。遅刻は4年生の時の1日だけ。知らないことがスッと自分の中に入ってくる感覚が何とも心地良いんです。毎日が楽しくて仕方ありませんでした。英単語の読み方は同級生たちが教えてくれました。逆に、文化祭の準備で料理をした時は、ゴボウのささがきやあく抜きなどを教えました。卒業した今でも同級生たちとLINEで近況を報告し合っています。
 高校に行きたくても行けない人はいます。学びたい気持ちがあれば、何歳でもいいんです。古い人でも希望が持てる「古希」で卒業できました。今では先生や介護施設の皆さんへの感謝の気持ちしかありません。

農業法人エイチアイ 代表 稲吉久徳さん

安心して柔道に打ち込める基盤をつくりたい

 2年前に北野町で農業法人エイチアイを立ち上げ、併せて柔道の社会人チームを発足しました。きっかけは「やってみようと思ったことをやってみた」、ただそれだけでした。
 小学2年生で柔道を始め、大学時代には全国5位になりました。しかし、柔道は実力ややる気があっても、企業の社会人チームは少なく、選手を続けていくのは難しいんです。選手生命も短いので、将来への不安も拭えない。同じように感じている選手は少なくないと思いました。本気で柔道に打ち込みながらも、安心して働ける基盤づくりをしたいと考えてできたのがエイチアイでした。現在はチームに社員はいませんが、大学時代の柔道仲間など関東周辺のメンバーが15人所属。将来はそのメンバーが関東で社員として農業をやりながら、柔道に打ち込めるようにしたいですね。
 昨年は災害の1年でした。同時に、経営のあり方を考え直す年でもありました。災害などで安定した出荷が見込めない地域は、市場で農産物の相場が下がってしまいます。なんとか価値を高めるため、今まで生産の中心だった水菜などの葉物野菜に加えて、流通量が少ない白ナスの生産に着手しました。今年は本格的に生産体制を整えていきます。
 ほかにも、産地直送の食材を生かした農家レストランの経営や障害のある人の就労施設との連携など、さまざまな試みも。安心して働ける場所をつくり、継続していくために、分野にとらわれず挑戦し続けたいです。

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