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シリーズ 共に生きる 第5回(令和2年11月15日号)

ただ、会いに来てくれるだけでいい

 11月25日から12月1日まで「犯罪被害者週間」です。平成10年、20歳の息子を傷害致死事件で亡くした廣瀬小百合さんに聞きました。

廣瀬小百合さん
平成23年に九州・沖縄犯罪被害者連絡会「みどりの風」を設立。同連絡会の会長を8年務め、現在は顧問。被害者同士の交流や支援をはじめ、犯罪被害者の実情を発信。昭和25(1950年)年生まれ。

突然襲った悪夢のような出来事

 当時、私は2級建築士として働いていました。その影響か、息子も建築士になりたいと熊本の大学に通っていました。息子は、アルバイト帰りに自転車で2人の男の間を通り抜けました。それがトラブルになり、顔面を1回殴られ、その場に倒れて頭を強打。熊本県警から電話を受け、私はすぐに病院に駆け付けました。ベッドに横たわった息子は、外傷もなくただ寝ているようで「大したことなかった」と安心した矢先に、医師から「手の施しようがありませんでした」と言われました。頭部のレントゲン写真は血で真っ白。外傷性くも膜下出血で亡くなりました。

理不尽な判決に悶々とする日々

 裁判では、気持ちをしっかり持たなければいけないと自分に言い聞かせました。ただ、加害者の顔を見た瞬間、あふれ出る涙が止まりませんでした。加害者は有罪でしたが執行猶予に。「息子は帰ってこないのに、加害者は刑に服することもなく、日常生活が送れるのか」と、あまりの理不尽さに、どうしても納得がいきませんでした。笑ってはいけない、おいしい物を食べてはいけないと自分に言い聞かせ、息子の供養をする日々でした。

同じ体験を分かち合い一歩踏み出す

 「誰かに話したい、聞いてほしい」と、心のどこかで思い続けていましたが「何年もたってるのに、まだそんなこと言ってるの」と、言われるのが怖くて言い出せませんでした。どんなに時間がたっても、被害者や家族が受けた苦しみや悲しみは、絶対に癒えません。同じ体験をした人同士なら、分かり合えると信じ、20人の犯罪被害者や遺族が集まり「みどりの風」を設立。私自身、顔を合わせてお互いの近況を話す、それだけで心が落ち着き、一歩を踏み出すことができました。
 犯罪は重大な人権侵害と言えます。被害者側が孤立して生きていかなければならない社会ではいけないんです。周りの人が、被害者や家族の置かれた状況や心情を知り、寄り添ってくれるだけで、日常生活を取り戻すきっかけになります。つらい気持ちを誰かに話したいと思ったら、いつでも私たちに会いに来てください。待っています。

【問い合わせ先】安全安心推進課(電話番号0942-30-9094、FAX番号0942-30-9706)

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