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シリーズ 共に生きる 第4回(令和2年10月15日号)

1人に背負わせずみんなで支える

堀川智史さん
病院は女性医師・心理士が参加する性被害者の集団療法を行っている。久留米市性暴力被害者支援カードの作成に協力するなど病院全体で啓発に努める。昭和58(1983)年生まれ

 国は10月から性暴力被害相談の短縮ダイヤル「#8891」を開設し、被害の支援を強化しています。被害者の現状について、のぞえ総合心療病院副医局長の堀川智史さんに聞きました。

無意識のうちに自分を抑え込む

 性暴力被害に遭うということは、自分だけの場所を侵されることです。あらがえない場合が多く、自分を抑え込んで行為を受けることが唯一の生き延びる方法になることもあります。不眠やさまざまな依存症などの療の中で話を何回も聞いていくうちに性暴力が原因だと気付くことも多いです。受けてしまった結果、さまざまな場面で嫌と言えずに我慢したり、頑張り過ぎたりすることが起きます。何かに没頭して記憶にふたをする人も。何事もなく日常を過ごしているように見えても、被害者は無意識に感情をため込んでいるのです。最終的に無理が効かなくなり別の症状として現れることがほとんどです。

表に見えている人は氷山の一角

 性暴力の実態は、以前より認知されるようになって、関係機関との連携も取れてきています。それでも表に見えているのはほんの一部です。性暴力の加害者は知り合いが9割といわれます。相談したくても、人間関係が壊れることを恐れてできないことが多いんです。やっと相談できたとしても「あなたにも責任がある」、「なぜ逃げなかった」と言われると、自分が悪かったと自分自身を責めてしまいます。誰かとつながり、支援が必要なのにできない状況に追い込まれます。周りに頼ることもできず、受診や相談にまで結びつかない人が数多くいることを理解してください。簡単ではないかもしれませんが、今、苦しんでいる人には、相談窓口・電話を利用したり、治療を受けたりなど誰かとつながってほしいです。

一緒に考えられる社会に

 性暴力被害は身近で起きていることをもっと知ってほしいですね。誰にでも起こり得ることです。何が「性暴力」なのかを知ること、正しい知識を持つこと、関心を持つことが大事です。被害を受けた人から相談を受けたら、「あなたは悪くない」と伝えてください。自分は一人ではない、周りに理解してくれる人がいると分かるだけでも安心感が違います。もし自分が被害を受けたとしたらどうしてほしいか、自身に置き換えて一緒に考えてほしいと思います。一人一人が想像力を働かせるだけで、本人だけに背負わせない、周囲や病院など関係機関も含めて協力して支えていく社会に変わっていくと思います。

【問い合わせ先】男女平等政策課(電話番号0942-30-9044、FAX番号0942-30-9703)

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