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久留米市美術館 とき・ひと・美をむすぶ(令和元年7月1日号)

市美術館のイベントや所蔵作品を紹介します。

小さな画面に思いを秘めて

 1848 年ロンドン。古典偏重の美術教育に飽き足らず、ルネサンス以前の、型にはまらない時代の芸術を目指した学生のグループ「ラファエル前派」。酷評を受けた彼らの心を支えたのは、美術批評家ジョン・ラスキンの思想でした。
 うわべではなく自然、いわば「物の本質(nature)に忠実に」と唱えたラスキンは、ラファエル前派を擁護する記事を新聞に寄せ、やがて彼らは実際に交流を始めます。ミレイはラスキンに肖像画を依頼され、スイス旅行に同行しました。地質の権威で、自ら無数のスケッチをしたラスキンに、ミレイも同様の緻密な描写で応えました。その折に制作された、ラスキンによる渓流の素描と、ミレイの板絵「滝」が本展に出品されます。
 「滝」は小品ですが、石の種類までうかがい知れるような手前の岩をはじめ、ラスキンからミレイに受け継がれた、自然美への賛歌が画面の隅々にまで息づいています。【学芸員:佐々木奈美子】

【問い合わせ先】市美術館(電話番号0942-39-1131、FAX番号0942-39-3134)

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