いまだに根強く残る部落差別。なぜ差別が起こるのか。私たちの意識に何が足りないのか。就労の観点から西日本新聞社の前田隆夫さんに話を聞きました。すると、外国人労働者との共生やLGBTなど、さまざまな人権問題と共通する課題が見えてきました。
最近でも差別落書きは起きていますし、いまだに採用する社員の本籍地を探る企業があります。被差別部落は以前、差別が原因で劣悪な生活環境に置かれ、それがさらに差別を生みました。しかし現在では、明らかな環境の違いは無くなり、もはや何に対して差別しているのか分かりにくくなっているのに、差別意識だけが根強く残っているのです。
大学で人権教育の講義を担当しています。そこで学生に、小・中学校や高校の授業で同和問題をどのくらい学んだかを尋ねると、地域差がとても大きいことが分かります。当然、就職した企業でも社員の知識や意識の差は大きいままです。しかし、企業で研修を受ける機会はそれほど多くありません。同和地区の所在地を役所に問い合わせるなど、企業活動で差別が生じているにもかかわらずです。
部落差別は過去の問題ではありません。差別解消の取り組みの有無に、地域差があってはならないはずです。
なぜ、差別的発言や人権問題が起きてしまうのか。これは「二つの欠如」が考えられます。
一つは知識の欠如です。問題に関する正しい知識が無いと、誤った情報をうのみにしがちで、意図しなくても相手を傷つけてしまいます。
もう一つは想像力の欠如です。相手の立場や胸の内に思いが至らない人ほど、不用意に人を傷つけます。差別される立場、弱い立場にいる人ほど大きな声を上げることができません。「見えないものを見る。聞こえない音を聞く」。それを意識したいものです。
近年、外国人労働者が増えています。彼らの存在無しに私たちの日常生活は成り立たないのです。一方、問題になっているのが外国人に対する人権侵害です。数年前、国内でヘイトスピーチのデモが相次ぎました。単なるデモではありません。言葉の刃を向けられた人たちは、自分の身に危険が及ぶのではと、心から恐怖を感じたそうです。
なぜ身近な存在なのに、外国人への差別的な発言が今も無くならないのでしょうか。それは「隣人感覚」の薄さが一番の原因なのだと思います。「外国人」をひとくくりに考えて、個人として見ていない。言葉をかける相手が「○○町に住んでいる○○さん」という意識があれば、汚い言葉はかけられないと思います。お互いに歩み寄って対話をし、個人として認識することが重要です。
外国人にとって住みやすく働きやすい環境というのは、誰にとっても過ごしやすい環境ではないでしょうか。
外国人、LGBT、ハラスメント、いじめなど、さまざまな人権問題が論じられています。それぞれが別の問題と分断されているように感じます。しかし、根底にはどの問題にも共通するものがあるはずです。「二つの欠如」もそうです。
私は長い積み重ねがある同和問題の運動や啓発が、他の人権問題に生かせると考えます。
特に「誰もが当事者」という考え方が大切です。誰もが恩恵を受ける小・中学校の教科書の無償化は、被差別部落の親たちが起こした運動の成果です。これ一つ取っても「同和問題は自分と関係ない」とは言えないはずです。どの人権課題も「自分ごと」として考えてみませんか。
【問い合わせ先】人権・同和対策課(電話番号0942-30-9045、FAX番号0942-30-9703)
1935年当時の被差別部落の地名や人口などが記された「部落地名総鑑」。就職や結婚などの場面で差別を生むものとして、1975年に国が回収しました。
しかし近年になって復刻版と称したものを出版しようとする動きがありました。出版は止められたものの、インターネット上でデータが拡散されてしまいました。削除要請などに取り組む中、今年の1月にも、部落地名総鑑のコピーの取引がインターネット上で発生しました。今も部落を差別する意識が存在することは明白です。全市民が自分ごととして差別解消に向けた行動をとれるように、市では研修会や講座を開催しています。
法改正で外国人が労働者として日本に在留できる職種が緩和されました。
国は、4月に8カ所の地方などに専門職を初めて配置。外国人との共生社会の実現を目指しています。
市では、法律の改正前から外国人の増加が見られ、外国人を雇用している事業所は平成26年度の10.4%が、29年度には12.7%に増加。窓口で多言語対応ができる通訳サービスを開始するなど、誰もが住みやすいまちの実現に取り組んでいます。
西日本新聞社編集局デスクの坂本信博さんを講師に招き、外国人労働者との共生をテーマに、取材から見えた課題などを話してもらいます。
(注意)申し込みは不要。託児は事前の申し込みが必要です
【問い合わせ先】人権啓発センター(電話番号0942-30-7500、FAX番号0942-30-7501)
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