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久留米市美術館 とき・ひと・美をむすぶ(令和元年6月15日号)

市美術館のイベントや所蔵作品を紹介します。

女神か、魔女か 永遠の女性像

 豊かな赤毛を波うたせて、こちらを見つめる女性。19世紀半ばのイギリスに起こった芸術家グループ「ラファエル前派」で、中心的な役割を果たしたロセッティの「魔性のヴィーナス」です。
 ビーナスは古典神話の愛と美の女神。右手の矢は、彼女の息子であるキューピッドが、人の心に火をつける道具でしょうか。また、左手に持つ果物は、「最も美しい女神に」としてビーナスに渡されたリンゴのようで、トロイア戦争の発端となった「パリスの審判」を思わせます。ですが、それだけでは画面を覆う花や、飛び交うチョウ、右上の青い鳥、女性の頭部に見える金の輪などの説明はつきません。特に不思議なのは後頭部の輪で、これは「光輪」というキリスト教絵画において聖人を表す印です。官能的な美女なのか。それとも無垢なる聖女なのか。その答えは、この絵を見る人の心の中にしかないのかもしれません。 【学芸員:佐々木奈美子】

【問い合わせ先】市美術館(電話番号0942-39-1131、FAX番号0942-39-3134)

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