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ギャンブル依存症と向き合う(令和元年5月1日号)

人に頼れないから依存してしまう

全国ギャンブル依存症家族の会 福岡代表・ASK認定依存症予防教育アドバイザー
村田麿美さん(東和町)
毎月1回家族の会を開催。当事者家族だけでなく、行政や司法、医療関係者なども参加できます。
より多くの人にギャンブル依存症の正しい知識や自助グループなどを知ってもらうことに力を入れています。

まずは知ってほしいインタビュー

 ギャンブル依存症は病気です。しかし、当事者や家族を含め、理解がまだまだ進んでいません。全国ギャンブル依存症家族の会 福岡代表の村田さんに話を聞きました。

遊びの延長線

 息子がギャンブル依存症になった。これが私が活動をしている原点です。息子が大学に進学し、友人の誘いでパチンコを始めたと聞きました。その時は、真面目でおとなしかった息子の新しい一面を見れたようで、うれしい気持ちだったのです。
 そんな中で、なにかおかしいなと感じる出来事が。息子が私の通帳から黙って遊びに使うお金を引き出していたんです。

誰にも言えない

 まさか病気だとは思っていなかったし、本人の意思の弱さだと思い、しっかりしなさいと叱りました。叱責や借金の肩代わりなどは、依存症を助長することになり、周囲の人が絶対にやってはいけない行為にもかかわらず。
 息子はどんどんパチンコにのめり込んでいき、大学を留年。私は自分を強く責めました。「もっと幼い頃から金銭感覚を養っておけばよかったのか」。いろんな後悔が私を苦しめました。そして、懸命に息子を育ててきた自尊心を崩されることが怖くて、夫にさえ打ち明けることができませんでした。
 誰にも言えない状況が、私と息子を一対一の関係に閉じ込めました。それからは、私が息子をコントロールする言動もエスカレートしていきました。

やっと共有できた思い

 何度反省や後悔の言葉を口にしても、誓約書まで書いてもパチンコをやめない息子。私はそのたびに裏切られた気持ちでいっぱいになりました。わらにもすがる思いでインターネットで調べ、息子は病気なのではと思い、病院へ。そこでやっと、息子の口から「やめられない」という訴えと、「もううそをつかなくていい。少しだけ気が楽になった」という安堵の言葉を聞けました。
 現在、息子は回復施設で就労プログラムへと進み、働いています。新たな人生のスタートとなる自立に向け、希望と少しの不安を胸に、自分らしく生きています。

まずは家族を救いたい

 一人でどうしようもなくなった時に、人に迷惑を掛けたくないから、代わりの物や行動に執着する。これが依存症なんです。ギャンブル依存症は、環境やその時の状況次第で、誰でもなる可能性がある病気です。しかし、体に症状が表れないので、本人も周囲の人もなかなか気付けません。
 私が大切にしているのは、家族が救われること。まずは家族が同じ境遇の仲間に接し、依存症の正しい知識を学べる自助グループにつながることが本人を救う大きな一歩です。
 ギャンブル依存症は完治しません。ずっと戦い続けないといけない。社会の理解が追いついていない今こそ、ギャンブル依存症を広く、正しく知ってほしい。たくさんの人が知ることで、一回失敗しても戻りやすくなる社会に変わっていくと信じています。

表に見えない病

 保健所でさまざまな依存症の相談を受ける保健師が、ギャンブル依存症の現状や特徴を解説します。

諸外国より高い割合

 平成29年度の厚生労働省の調査では、20歳から74歳の3.6%が、ギャンブル依存症を疑われる状態になったことがあるという結果が出ました。これは、諸外国と比べると高い割合です。パチンコなどが身近にある日本の環境をギャンブル依存症を誘発する原因の一つとして挙げています。30年10月に、ギャンブル依存症対策基本法が成立。国を挙げて対策を強化しています。

当事者は依存を認めない

 29年度に私たちが受けた依存症の相談は78件。その内、ギャンブルに関するものは5件。これは、依存症になる人が少ないのではありません。治療が必要な人が専門の窓口や支援機関にたどり着けていないのだと考えています。
 依存症は否認の病と言われます。当事者が依存していることを認めない。周囲の家族も、「不真面目で怠け者だからギャンブルがやめられないんだ」という先入観で、治療が必要な病気という認識を持ちにくいんです。「LOST」という検査があります。当事者や家族などが、ギャンブル依存症の恐れがあるかどうかを4項目で確認できます。

抱え込まずに相談を

 ギャンブル依存症に特効薬はありません。依存症を学び、医療機関や自助グループとつながって苦しみやつらさを分かち合いながら、ギャンブルをしない生活を続けることが大切です。一度ギャンブルの快感を覚えた脳は、再びその刺激を求めます。その時に、境遇を共にする仲間の存在が大きいんです。
 ギャンブル依存が原因で、自己破産や児童虐待、自殺などにつながるケースもあります。本人や家族だけで抱え込まず、相談してください。私たち市職員も一緒に考え支援します。

【問い合わせ先】保健予防課(電話番号0942-30-9728、FAX番号0942-30-9833)

生涯を通じてギャンブル依存症になった疑いのある人の割合(平成29年度 厚生労働省調査)

  • 日本3.6%
  • オランダ1.9%
  • フランス1.2%
  • スイス1.1%

LOST 二つ以上当てはまる場合は、ギャンブル依存症の恐れがあります

Limitless(リミットレス)
 予算や時間の制限を決めない、決めても守れない

Once again(ワンス アゲイン)
 勝ったとき「次のギャンブルに使おう」と考える

Secret(シークレット)
 ギャンブルをしていることを隠す

Take money back(テイク マネー バック)
 負けたときに、すぐに取り返したいと思う

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