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特集 地域の課題を私たちの手で(平成31年2月15日号)

まちの未来 私たちが描く

「地域の課題を私たちの手で」
市内ではさまざまな市民団体が活動中です
市の補助制度を利用している2団体に設立の思いや今後の目標を聞きました

人、心、距離縮める

障害のある子の保護者のつながりづくり 輪をつくろう

思いを語り合える場を

 津福本町の空揚げ店の中2階。ロフトにあるオープンスペースでお茶会を開くのは、障害のある子を持つ保護者同士で活動する「輪をつくろう」の皆さんです。
 「地域とつながって一生ここで生きられたらいいなと思うんです」。代表の藤野薫さんも、障害のある現在23歳の子の親です。「私はこれまで地域の中で子育てしてきました。でも、今は親同士さえつながりにくくなっていると思います」。親が思いを語り合える場をつくりたいと思ったのが団体の出発点です。
 一昨年に新聞にも取り上げられた、校区の「人に優しい場所」を示した手描きの地図作り。校区内の飲食店や医療機関などの「気軽に相談に乗ります」「トイレ借りられます」といった、人に優しいサービスを載せています。

地域に広がる効果

 「ポイントは手配りしたこと」。地図を置いてくれる店や企業に、制作した保護者と障害のある子どもが一緒に訪問し、手渡ししたそう。「地図を作った目的は地域とのつながりづくり。顔が見える関係で、その子に対しても、障害に対しても、距離が変わります」。
 この取り組みで地域に変化が表れました。総菜店がアレルギー対応の弁当を作ってくれるようになったのです。ある保護者は「うちの子はアレルギーが多く、持参した物しか食べられなかった。行事の時に、この総菜屋さんの弁当を友達と一緒に食べられた喜びは格別でした」と話します。
 「障害の有無に関係なく、声を掛け合える地域にしたい」と話す藤野さん。「公園に居ても障害のある子はなかなか声を掛けてもらえない。それは、障害のことを知らないから。距離が縮まれば、知るきっかけになる」。現在、城南中校区にエリアを拡大中。「じわじわと広がればいいですね」と展望を語ります。

楽しく「学ぶ場」

音楽で認知症予防と健康づくり メモリー・ケア

音楽が役立つと直感

 「長年プロとして携わった音楽が高齢者の健康づくりに役立つと予感していました」。
 代表の熊谷まゆ美さんは元歌手。メモリー・ケアは、夫である作曲家の須佐卓郎さんと共に平成26年に設立しました。「高齢者の中には、若い頃に戦争で楽器や音楽に興じることを制約された人もいます。だから、楽器で楽しみながら何かできないか」と考えました。
 主な活動は、月1回「健康歌声フレンズ」を開催。打楽器を使ったリズムトレーニングの他、唾液の分泌を促す早口言葉、懐メロを歌い思い出を語り合う回想歌声などを行います。さらに、出前講座は年20回以上。「スタッフが20人は必要でした」と言います。
 熊谷さんは、設立から1年半でスタッフ養成講座を実施。「1回2000円と安くない参加費を取り、人に教えられるレベルになるようしっかり学んでもらいました。そうすれば、それぞれの技術として、後で役立ちますから」。
 熊谷さんは「楽しみながらも学びの場であること」を大切にします。「退職した人は特に、張りのある時間や学びの機会を求めています。そのためにも、教える側のレベルは大切なんです」。参加者は年々増加。出前講座が発展して他の市町から事業委託を受けたり、校区でサークルが立ち上がったりしています。

地域に広がって欲しい

 熊谷さんに今後を聞くと、「関わった人が、自分が住んでいる地域で小規模なサロンを開いて欲しいです」と話します。
 初期からのスタッフである真子勝代さんは、約1年前に南校区で高齢者サロンを始めました。「ここでやったことが自分の町内で役に立つと思いました」と真子さん。熊谷さんは「教室で目標を持った人は、目の輝きが変わります。私もいまだに音楽の新たな要素に気付かされています」と話しました。

市民活動・絆づくり推進事業費補助金に新制度 校区とNPO連携を後押し

 久留米市は「市民活動・絆づくり推進事業費補助金」で皆さんの活動を応援しています。今年度、NPOと校区の連携を後押しする新制度を作りました。その狙いを担当者が解説します。

 この補助金は、思いやり活動や安全安心を守る活動、地域の魅力を高める活動、にぎわいづくり活動が対象です。講演会講師の謝金やチラシの印刷費、会場使用料などに対して補助金を支払います。上限は10万円〜30万円。市の担当部局と一緒に行う事業だと100万円が上限になります。申請は年度1回。ただし、校区コミュニティ組織が行う事業は、年度内に複数回申請できます。
 市は、NPOと校区活動の連携を促進しようと、30年度から新制度を作りました。校区コミュニティ組織がNPOと連携して行う取り組みに20%の上乗せ補助を行うというものです。
 私が仕事の中のいろんな場面で皆さんの取り組みを見ていて、校区コミュニティ組織の地域性とNPOの専門性が合わされば、課題解決力が高まるのではと感じています。

【問い合わせ先】協働推進課(電話番号0942-30-9064、FAX番号0942-30-9706)

実は”Win-Win”な私たち

青峰校区まちづくり振興会×NPO法人「新現役の会ちくごセンター」

 校区とNPOの連携は市内で始まっています。青峰校区で開かれている「iPadで脳トレ初心者入門教室」で連携のメリットが見えます。

足りないところを補い合う

 教室を担うNPO法人「新現役の会ちくごセンター」は、タブレットを使った高齢者の仲間づくりと認知症予防を約10年続けている団体です。同校区の内野壽雄会長は、次のように話します。「年を取って自由に動けなくなっても、インターネットができれば、人と話せます。でも、やり方が分からないから機材も買えず、始めるきっかけが無いのです。新現役の会は貸し出し用タブレットを持っていて、教えるノウハウもある。校区住民だけでは実現できないことが可能になるのです」。
 一方、同会の江上憲一さんは「高齢者の孤立防止という目的は共通です。それに、我々も連携するメリットは多い。校区と一緒にやると会場が確保しやすいし、対象者への案内も届きやすくなります。昨年、内野会長にお願いして、校区全戸にチラシを配布してもらいました」と言います。内野さんは、「災害時に情報収集できる手段としてもタブレットは効果的。校区の防災の取り組みとして配布に協力しました」と話します。
 互いの目的が一致した、立場や強みの違う団体が連携することは、1+1が2にとどまらない可能性の広がりがあるようです。

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