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私の新春メッセージ(平成31年1月1日号)

災害看護、製品開発、多胎児育児の支援、着物文化の発信。
それぞれの道で挑戦を続ける4人に、新年の抱負を聞きました。

つながりが一番の防災

災害看護専門看護師 岡ア敦子さん(38)

被災者にとっての最善を

 久留米大学病院の中央手術部に勤める岡ア敦子さんは、平成29年12月、九州初の「災害看護専門看護師」に認定されました。国内外で災害現場での看護活動や、看護師への災害看護研修の実施など、幅広い役割を担っています。
 これまで、岡アさんは、さまざまな被災地で活動してきました。平成30年7月豪雨では、広島県へ支援に行きました。限られた資源の中で、避難所での感染症予防やメンタルケアなど、避難者の暮らしを整えることに努めました。
 一方で、手厚すぎる支援は、時に自立を妨げてしまうと考える岡アさん。「被災者がその人らしく、自立した生活を送れるようになるために、最善は何なのかを常に考えるようにしています」と話します。

組織を越えた関係づくり

 岡アさんは、災害対策で必要なことは、病院と行政、地域などがつながることだと言います。「専門的な知識やスキルがあっても、個人でできることは限られます。顔の見える関係づくりを進めたい。市民を中心に行政や企業などと防災を考えるチームがつくれるといいですね」。
 3月に市民向けの講座の講師を務めます。「市民の皆さんは、たくさんの疑問があると思います。多くの人に参加してもらい、たくさん質問を聞いて、一緒に防災を考えていきたいです」。

中小企業の研究に追い風

世界最小の風洞を開発 ローン・ジョシュアさん(24)

縁の下の力持ち

 自動車や建物などの模型に風を当て、影響を測定することを風洞試験と言います。試験装置は、高額で巨大なため、大手企業しか持つことができませんでした。それを小型化し、身近な物にしたベンチャー企業が藤光町にあります。
 「風洞は、縁の下の力持ちなんです」。日本風洞製作所社長のローン・ジョシュアさんは話します。「例えば、自転車競技。漕ぐ力の7割以上が空気抵抗で消費されます。効率の良いフォームの研究やウエアの開発などに風洞は欠かせません」。
 今までの一般的な風洞は、全長20メートルほどで、値段も数億円。中小企業には手の届かない物でした。同社は小型化による測定のずれを補正する独自のシステムで小型化に成功しました。「私たちが開発したAero Optimは、全長1メートルほどで650万円。風洞の民主化と呼んでいます」。

今年は勝負の年

 当初のターゲットは競技用自転車でしたが、自動車や航空、レジャー産業など100社以上から引き合いがあり、予想以上の評判。4月から本格的に販売します。
 「2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、多くの選手のために使ってもらいたいです。今年は勝負の1年。製品を一気に広めるチャンスです」。

明日が少し楽になれば

多胎児の育児を応援 田口亞紗美さん(32)

みんなで集まっちゃえ

 「双子や三つ子を育てることは大変」。元看護師、双子の親である田口さんは、多胎児の母親同士のSNSグループで、多くの相談を受けていました。「私にも育児や仕事があるから返信するにも限界があって」。ならば「みんなで集まっちゃえ」と、平成30年1月につくったのが、多胎児家庭同士が集える場を提供する団体「TWINS DAY JAPAN」です。
 「つながるだけじゃなく、生活が楽にならないと」。大切にするのは悩みを具体的に解決すること。8月に開いたイベントでは、その視点で物やサービスを厳選しました。多胎児用のベビーカーやチャイルドシートなどを紹介。相談ブースにも、人に応じて具体的な助言ができる人を配置しました。

希望を持つ人を増やしたい

 「違う立場のつながりも大切」。イベントには成人の双子も来場しました。そこに我が子の将来を見いだす育児中の保護者。一方、双子は親の苦労を知る機会に。「双子を妊娠中の人に『双子育児に役立つ情報を今のうちに集めて』と先輩が助言する場面もありました」。
 今年のイベントの感想から手応えを感じています。「ある人からの手紙に『明日も頑張ろうと思えた』と書いてあって。こういう気持ちになる人を全国に増やしたいですね」。

日本と世界を着物で結ぶ

KIMONOプロジェクト 高倉慶応さん(50)

相手を思い、手間暇をかける

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに合わせ、世界の国と地域をイメージした着物206着を制作する「KIMONOプロジェクト」。京友禅や西陣織、博多織など全国の着物産地の作家が協力し、現在、約120カ国が完成しています。発案者である高倉慶応さんは、「相手の国の文化や自然、歴史を着物に取り入れてあつらえることが、私たちにできる一番のおもてなし」と話します。
 デザインは各国の大使館に協力を得ながら決定。相手をよく知り、思いを込めて作ることが、世界の平和にもつながると、高倉さんは信じます。「オリンピックは平和の祭典。この着物も開会式で活躍できるよう、地元の皆さんにもこれまで以上に応援してもらいたいです」。

もう一つのオリンピック

 「このプロジェクトは作り手にとって、オリンピックのようなもの。全国の産地で新たな挑戦や競争が生まれています」。日本の伝統文化や着物文化の活性化も、プロジェクトの大きな目的です。着物産業の活性化を、高倉さんは実感しています。「今年は締めくくりの年。皆さんと協力しながら、残りの着物を完成させたいと思います」。

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