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久留米市美術館 とき・ひと・美をむすぶ(令和元年12月1日号)

市美術館のイベントや所蔵作品を紹介します。

半世紀越しの作品

 熊谷守一は、東京美術学校(現東京藝術大学)を卒業後、明治38(1905)年から39(1906)年まで樺太調査隊に記録画要員として参加します。樺太の漁港や海産物、植物などを絵で記録するのが守一の仕事でした。しかし、守一が描いた記録画は、大正12(1923)年の関東大震災で焼失したため現存していません。調査隊への参加から半世紀も後に、当時のスケッチを基に描いた油彩画があります。それがこの「土饅頭」です。
 土饅頭とは、人の亡きがらを覆った盛り土のこと。つまり、この作品に描かれているのはお墓です。中央には白い墓標が立ち、その傍らに赤や紫、黄色の草花が添えられています。1950年代の作品らしく、赤い輪郭線と平明な色彩、一方向にそろえられた筆の向きは、この頃に完成をみる「モリカズ様式」の特徴に当てはまります。守一は、空や大地も含めて画面を構成する全ての要素を単純化した色のかたまりで表現しています。【学芸員:森智志】

【問い合わせ先】市美術館(電話番号0942-39-1131、FAX番号0942-39-3134)

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