トップ > 広報くるめ > 障害者差別解消へ合理的配慮を考える

障害者差別解消へ合理的配慮を考える(令和元年12月1日号)

手話通訳が担う心のつながり

 合理的配慮として情報バリアフリー化が求められる一方、ニーズに対して手話通訳者は不足。聴覚障害者の「情報の保障」は確立できていません。背景や聴覚障害者を取り巻く現状、解決すべき課題、手話通訳者としての思いを聞きました。

「手話の会が要らない社会が理想ですけどね」と、伊藤民子さんは笑顔で話します。

認知されていなかった手話

 久留米手話の会は昭和48年、手話通訳を行うボランティア団体として発足しました。当時、市内に手話通訳者はゼロ。手話は社会に認知されていませんでした。聴覚障害者の多くが人前で手話を使うことを避け、ろう学校でも正式なコミュニケーション手段ではありませんでした。しかし、だんだんと手話が言語として認識され始めました。聴覚障害者が主役のテレビドラマ「愛していると言ってくれ」「オレンジデイズ」などが放送されると、多くの人が手話に関心を持ちました。久留米市でも、通常は年間30人ほどの手話教室の申し込みが、100人以上になるなど、関心の広がりを見せていました。

増えない担い手

 現在の会員は77人。徐々に減る会員数と高齢化が課題となっています。一人前になるまでに5年はかかるという手話通訳者のハードルは高く、共働きの増加などを背景に、成り手が減っています。伊藤さんは「手話通訳が仕事として認められないことも一因」と言います。
 久留米市の手話通訳者の派遣制度は、障害者福祉課と手話の会で担っています。聴覚障害者本人、施設や主催者からの申し出に応じ、病院受診や行政手続き、講演会やイベントへ。時には警察や裁判所での手続きにも同席します。
 「緊急の申し出にはできるだけ対応していますが、病院に付き添うにも日程調整が必要です。普通、自分が都合の良いときに行きたいですよね。行政機関や大きな病院などに手話通訳者が常駐していれば、聴覚障害者の必要とする情報が保障されます。手話通訳が社会に認められ、仕事として活躍できれば、成り手も増えると思います」。

通訳は信頼関係

 近年、技術の発達により聴覚障害者へのサポートも充実してきました。声で発した言葉を、スマホの画面に文字として表示する無料アプリなどもあります。では、手話通訳は不要なのでしょうか。「手話通訳は『心のつながり』も担います。だから寄り添える『信頼関係』が必要なんです」と伊藤さんは言います。IT技術の革新や先進的な機器があれば情報は伝わります。「でも、コミュニケーションは単なる情報伝達だけではありません。相手の気持ちを感じ、心をつなぐ。それが無いと十分とは言えませんから」。

コミュニケーションの障害

 伊藤さんは、聴覚障害を「コミュニケーションの障害」と言います。ある小学校の授業を例に挙げました。
 「聴覚障害者が小学校に招かれて話をした時のことです。災害時の心配をした児童に聴覚障害者が言ったのが、『警報が聞こえないことも不安だけど、避難所で情報が聞こえない、人と話せない、人とつながりにくい中、今起こっている事が分からない不安や恐怖は、皆さんの数十倍だと思います』。また、別の児童の『普段の暮らしでうれしい瞬間はどんな時?』という質問に、ある聴覚障害者はこう言ったんです。『聴こえないと知った上で、手話ができない人が何とかコミュニケーションを取ろうとしてる。そういう時だよ』と」。

伝えたい思いが安心を生む

 手話の会が要らない社会が理想だと言った伊藤さんは、「いろんな人が聴覚障害者とコミュニケーションを取ろうと思う意思が大切」と訴えます。コミュニケーションは、手話だけでなく筆談や身振り、空書きなど、いろんな手段があります。「『相手に伝えたい』と思う人が増えれば、きっと聴覚障害者の安心は大きくなるはず」。

【問い合わせ先】障害者福祉課(電話番号0942-30-9035、FAX番号0942-30-9752)

合理的配慮とは?

 障害のある人と障害のない人の人権が平等に守られるよう、一人ひとりの特徴や場面に応じて起こる困難さを取り除くための調整や変更のこと。日本では、平成28年4月に施行された障害者差別解消法で定められています。
 具体例として「車いす利用者に対して段差があったらスロープを渡す」、「障害の特性に応じた休憩時間を調整するなど、慣行の柔軟な変更」、「意思疎通が不得意な人に、実物や絵、写真などを使って分かりやすく説明」などが挙げられます。

チョットだけでも手話に挑戦

 暮らしの中で聴覚障害のある人と接したとき、あなたからあいさつをしてみては。簡単な手話でもコミュニケーションのきっかけになります。

話しかける前に
 聴覚障害者に話し掛ける時は、まず目を合わせましょう。目が合わない時や後ろから話し掛ける時は、驚かせないように、自然な強さで肩をたたいてください。

手話の会は見学歓迎

 事前に連絡すれば、会を見学できます。えーるピア久留米で、毎週火曜19時〜21時、水曜10時〜12時に活動しています。問い合わせは伊藤さん(電話番号0942-38-7048、FAX番号0942-37-3999)まで。

▲このページの先頭へ