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久留米市美術館 とき・ひと・美をむすぶ(令和元年11月1日号)

市美術館のイベントや所蔵作品を紹介します。

動き出す「いのち」

 熊谷守一が描く生き物たちは、今にも動き出しそうに見えます。それは、計算された構図や色彩によるところもありますが、何より一瞬の動作を捉えた観察力がその根底にあります。時として実寸以上の大きさで描かれた生き物の姿は、小さな命を見つめる守一との距離の近さを物語っています。
 オニユリの周りにひらりと舞うアゲハチョウを描いた「鬼百合に揚羽蝶」。筆跡を横方向に統一したフラットな青地の上に、補色に近い赤色の花が真っ先に私たちの目に飛び込んできます。その形は、特徴的なオニユリの姿を極限まで簡潔に再構成しながら、まるで生き物のような躍動感も備えています。一方のアゲハチョウは堂々と羽を広げており、今まさにオニユリの花で羽を休めようとする瞬間をカメラで切り取ったかのようです。
 命の源泉だけを抽出したかのように描き出された生き物たちの姿をぜひ会場でお楽しみください。【学芸員:森智志】

【問い合わせ先】市美術館(電話番号0942-39-1131、FAX番号0942-39-3134)

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