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生活実態調査から見えた課題(令和元年10月1日号)

お金の問題だけじゃない「子どもの貧困」

 近年、「子どもの貧困」が社会的に大きな課題となっています。経済的な貧困だけでなく、社会から孤立する「関わりの貧困」が指摘されています。久留米市は、生活実態調査の傾向を踏まえ、対策を総合的に進めていきます。

体験やつながりが不足

 平成30年1月、久留米市は「子どもの生活実態調査」の結果を公表しました。見えてきた傾向は「生活困難の度合いが子どもの習い事やクラブ活動、家庭での読書などさまざまな体験機会を制約している」、「生活困難の度合いが高いほど困っていることを抱えている人は多いにもかかわらず、それを相談できる相手が少ない」、「近所づきあいなど社会的つながりがあれば、子どもの意欲や自己肯定感につながる可能性がある」などでした。

子ども食堂は「つながりの場」

 子どもが健全に成長するためには、身体的にも精神的にも安定して暮らせる環境が必要です。しかし、保護者が不安定・不規則な仕事をしているなど、さまざまな理由で、一緒に過ごす時間が無かったり、食事が満足に取れていなかったりする家庭も見られます。
 そういう環境で暮らす子どもが、地域社会とつながることで解決できる課題もあります。そして、そのつながりを保っていくためには、同時に保護者が社会から孤立しないようにしなければなりません。市は、子ども食堂の運営を支援しています。それは、食事の提供にとどまらず、地域や社会とのつながりを持ち続ける場になることを期待しているからです。

連携で実効的な取り組みに

 子どもの貧困対策は、生まれ育った環境によって子どもが不利益を被るのを防ぐという視点だけでなく、地域の将来を支える人材育成や活力ある地域社会の創造の視点からも重要です。
 市は今後、対策の目的や方針、施策の柱、事業などを整理し、子どもの貧困対策を進めます。現在の対策や課題を共有し、市役所全体で取り組むこととしています。さらに、学校や家庭、地域、企業など関わる人や機関と連携・協力し、実効的な取り組みを目指します。すべての子どもたちが夢と希望を持って成長していける地域社会の実現に向けて、久留米市は、さらに対策を進めます。

【問い合わせ先】子ども政策課(電話番号0942-30-9227、FAX番号0942-30-9718)

「子どもの貧困対策」の取り組みを紹介

【教育の支援】

 学校を地域の基盤として、学力の保障や福祉機関との連携を強化。また、就学支援策の充実や困窮世帯への学習支援などに取り組みます。

【生活の安定支援】

 困窮が社会的孤立を深めないように、保護者が生活を安定させられるようにサポートする体制を整備。同時に、子どもの食育や居場所確保も進めます。

【保護者の就労支援】

 生活の基盤となる収入を安定して得られるように、保護者の就労を支援します。

【経済的支援】

 児童手当や母子父子寡婦福祉資金の貸し付けなどの経済支援を継続します。

安武校区の取り組みを取材 関わりの貧困は地域全体の課題

 安武校区は「安武子ども食堂」などさまざまな取り組みを通して、校区全体で子どもや子育て世帯を応援しています。同食堂運営委員会の緒方麻美さんに聞きました。

緒方麻美さん(安武町)
「安武こども土曜塾」「安武子ども食堂」「ウキウキ☆フリーマーケット」など、コミュニティセンターに勤務しながら、校区のボランティア活動を支える。平成30年7月、市教育委員会委員に就任。昭和43(1968)年生まれ、50歳

安心できる居場所

 安武子ども食堂は、コミュニティセンターで月2回、土曜の昼食を100円で提供しています。読み書きや読書、体験学習などを行う「こども土曜塾」と併せて開催。地域のボランティアが午前中に調理します。子ども食堂の時間だけの参加もできるので、気軽に入れる場所になっています。
 緒方さんは子ども食堂を、地域課題の解決手法の一つと言います。「ある日、デザートのゼリーを友達の皿から取って、集めている子が居ました。仕草や表情から、満たされていない気持ちが伝わってきたんです。『困った子』って実は『困っている子』なんだなと。だから、ゼリーをたくさんお皿に盛ってあげました。すると、その子は友達と仲良く分け合い始めました。少しは満たされたのかな、と安心しました」と緒方さん。「核家族が増えて生活環境は変わりました。孤独な子はたくさん。だから土曜塾や子ども食堂を安心できる居場所にしたい。経済的な貧困だけではなく、関わりの貧困も解決しないと」。

「買えない」。自ら孤立に

 安武校区では、10月から「ウキウキ☆フリーマーケット」も開催予定。お金のかかる制服や学用品の他、洋服や雑貨などを気軽に買える仕組みです。この企画は子育て中の母親のアイデアを大きく膨らませたもの。関わる人を増やし、地域の担い手不足解消も期待した試みです。
 経済的な貧困がきっかけで、自ら孤立を選ぶ人が多いと言われます。「かつての貸し借りや譲り合いの文化は消えかけ、今は使えるのに捨てられてしまう物ばかりです。そういった資源を地域で循環させるだけで助かる人が居ます。孤立した家庭で、保護者の価値観だけで子育てをすると、さらに孤立の連鎖を生みかねません。困っているからこそ、子どものために何とか来て欲しい。そして地域と関わるきっかけになればと思います」。

成長の機会奪う「相対的貧困」 子どもの貧困の現状

 国の調査で、平成27年度の子どもの貧困率は13.9%。7人に1人が「相対的貧困」です。食べることもままならない絶対的貧困と違い、日本の一般的な生活水準と比べて困窮した状態。外から見えにくい上、教育や体験の機会が制限され、地域で孤立するなど不利な状況に。また、貧困によって子どもの希望や意欲はそがれやすいのです。
 生育環境に左右されず、健全に成長するには、経済面や学力面の支援に加え、意欲や自制心、やり抜く力など生きていく能力を身に付ける必要があります。数値化できないので「非認知能力(IQなどで数値化できる能力と違い、数値化できない意欲や興味・関心を持って、粘り強く、周りと協調して取り組む力や姿勢。)」と言われます。
 そのために重要なのが、大人が子どもに自立に必要な力を伝える「社会的相続(大人からの「自立に必要な力」の伝達。人と関わる力や生活・学習習慣などが挙げられる。)」とされています。地域の大人が子どもと関わることが不可欠で、それが貧困の連鎖を絶つことにつながります。

【社会的つながりと困窮の関係】

項目=保護者に相談相手が居ない
困窮層=15.3%
周辺層=9.6%
一般層=3.4%

項目=放課後一人で過ごす子ども
困窮層=19.2%
周辺層=14.8%
一般層=14.7%

項目=ゲームやスマホを3時間以上使う
困窮層=25.1%
周辺層=13.3%
一般層=10.7%

子どもの生活実態調査では、市独自の指標として「生活困難世帯」の階層分けを、低所得、家計の逼迫、子どもの体験や所有物の欠如、の三つの要素で判断。困窮層は二つ以上に該当、周辺層はいずれか一つ、一般層はいずれにも該当しないと分類

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