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7月は同和問題啓発強調月間(平成30年7月1日号)

市民意識調査の分析から見えること

人権意識が暮らしやすさを高める

久留米市は、平成29年11月に、人権・同和問題市民意識調査を実施しました。
その結果を分析した福岡県人権研究所の加藤陽一さんに、結果の特徴や見えてきた課題などを聞きました。

男女ともに高い意識
調査結果で、印象に残った点が二つありました。一つ目は、同和問題への関心度の性別ごとの違いに特徴があったことです。
同和問題は、職場での研修や学校の授業で出会うことが多い問題で、これまで分析を担当した自治体では、男性の関心度が高い地域がほとんどでした。しかし、久留米市は女性21.3%、男性24%と、ほぼ同じ割合でした。この結果を見ると、久留米市では、同和問題に関する研修・啓発に参加する機会が、性別問わずきちんとあるのだろうと推察できます。
他にも、女性の人権問題で、職場や学校などでの性的な嫌がらせの存在を、問題と捉える男性の割合が高く、久留米市の皆さんの男女共同参画の意識の高さが見受けられます。
肯定的な意見が多数
二つ目は、自由意見の内容です。他のほとんどの自治体では、人権・同和教育や行政に否定的な内容が多いのですが、久留米市では、前向きな記載がとても多く、否定的な意見であっても、感情的な記載はほとんどありません。他ではあまりないことです。これは、人権啓発・教育の取り組みのバランスの良さや、継続性の結果だと思います。
また、地域に根差した「中学校区人権のまちづくり」や「小学校区人権啓発推進協議会」での取り組みに、幅広い世代が参加していて、貴重な学習の場となっている、という意見も拝見しました。これからも、地域での人権啓発の取り組みを積極的に進めてもらいたいですね。
啓発は根気強く何度も
一方で、課題も見えてきてました。
結婚や就職時の身元調査や信用調査を「容認・肯定」する市民が、前回の調査より大幅に増加しています。前回の調査で「どちらかと言えばおかしいと思う」と答えた人たちが、今回は「仕方ないと思う」という回答に変わったのではないかと、私は分析しています。 時代の流れや場の空気に左右されず、「本人の適性・能力や人柄以外のことを調べて、可否を判断することは許されない」と考えられる人権意識を、しっかりと持つ必要があります。
さらに言うと、身元調査を容認する意識があるということは、部落差別意識が温存される土壌が残されているということでもあります。部落差別の解消のためにも、教育現場や啓発などでたびたび取り上げ、学び続けることが大切です。
教育現場と行政の連携を
今後は、教育の現場と行政で、調査結果や課題を共有しなければなりません。その上で、人権問題に自然に出会える環境づくりが大切になると思います。例えば、学校教育の中で、行政が作った人権パンフレットを、子どもたちが日常的に目にする場所に置いておく。それだけでも、人権意識が自然と芽生えるきっかけになると思うんです。
同和問題について抱く印象は、その人が当事者、いわゆる被差別部落の人とどのように関わってきたかで大きく変わります。個人的な経験に根差した偏見は、一般的な教育や啓発では変わりにくい。なので、「その経験はあくまでも一対一の個人的なもので、被差別部落全体がそうではない」と伝え、気付いてもらうしかありません。
暮らしとの関連感じて
「久留米市は、誰もが住みやすいまちに一歩一歩進んでいるのではないか」。調査を分析しながら、私が持った感想です。例えば、今回の調査で、女性の人権を意識して行動している人が多いということが明らかになりました。このことから、女性の暮らしやすさは以前より高まっているだろうと思います。こうした状況が、同和問題をはじめ、あらゆる人権課題でも起これば、だれもが安心して暮らすことのできる「人権のまち」になるはずです。
市民の皆さん一人ひとりの人権意識の高まりが、暮らしやすさにつながるということを、感じてもらえるとうれしいですね。


【問い合わせ先】人権・同和対策課(電話番号0942-30-9045、FAX番号0942-30-9703)

Q.あなたは結婚や就職の際に、相手方などの身元調査や信用調査をすることをどのように考えますか

今回(29年)結婚・就職

  • 許されない=17.3%
  • どちらかと言えば許されない=24.3%
  • 好ましくないが仕方がない=38.5%
  • 当然のこと=4.9%
  • 分からない=11.1%
  • 無回答=3.9%

前回(18年)結婚

  • 許されない=28.1%
  • どちらかと言えば許されない=27.6%
  • 好ましくないが仕方がない=30.8%
  • 当然のこと=7.1%
  • 無回答=6.4%

前回(18年)就職

  • 許されない=47.4%
  • どちらかと言えば許されない=26.2%
  • 好ましくないが仕方がない=20.1%
  • 当然のこと=3.5%
  • 無回答=2.8%

今なお続く身元調査 戸籍・住民票を違法に取得

身元調査や信用調査につながる戸籍や住民票の不正取得事件が、今も全国で発生しています。昨年は大分県で、探偵が委任状を偽造して、他人の住民票と戸籍謄本を不正に取得するという事件が発生しました。
これは、基本的人権を侵害する絶対に許されない行為で、戸籍法にも違反します。身元調査や信用調査は、求める人が居るから成り立っています。差別につながる調査を求めないことも、安心して暮らせる社会づくりの一環です。

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