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久留米市美術館 とき・ひと・美をむすぶ(平成30年5月15日号)

市美術館のイベントや所蔵作品を紹介します。

椿貞雄の可憐な絶筆

ガラスの瓶に水がたっぷりと注がれ、一輪の白いツバキがやや無造作に生けられています。
このツバキの花は、病床にあった椿貞雄が見舞いにもらった物で、入院する日の朝、迎えの車が来るまでの合間に一気に描いたと言われています。
柔らかな花びらと青々とした固い葉の質感、さらに水の透明感が、無駄の無い素早いタッチで捉えられており、花という生命への画家としての深い愛情と、自らの死を予感してもなお描きたいという、美への強い情熱が感じられます。
椿貞雄は、自分の姓にちなんだツバキの絵を多く描いていますが、このツバキの花の姿には、飾らない人柄だった彼自身のイメージが重なります。その意味でも、この絶筆は最後の自画像でもあったと言えるのではないでしょうか。【学芸員:稲富景子】

【問い合わせ先】市美術館(電話番号0942-39-1131、FAX番号0942-39-3134)

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