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第28回 じんけんの絆(平成30年3月15日号)

高齢者虐待を見逃さない

介護や健康、虐待防止、権利擁護など高齢者の暮らしに関する相談や支援を行う地域包括支援センターで、社会福祉士として働く池上周さんに、高齢者虐待の課題を聞きました。

「助けて」という心の叫び

私の担当地域で、長い間、母親の介護をしている人が居ました。ある時、「母に手を上げてしまいました。自分が許せなくて、とても苦しい」と心の内を明かしてくれたんです。
介護する人が心身ともに疲れ果て、つい強く叱ったり、手を上げたりする事例は後を絶ちません。中でも多いのが、認知症を伴っているケースです。周囲に迷惑をかけたくないと一人で抱え込み、ストレスのはけ口が介護される側に向かうのです。
虐待は一方で、介護に追い詰められた人たちの、「助けて」という心の叫びでもあると思うんです。

弱まった隣近所の関係

家族や周囲が気付き、私たちに相談があったときには、緊急入院が必要なほどのけがをしていることがあります。
そんなとき、もう少し早く対処できたら、と悔やまれます。
早く発見できなかった要因の一つは、地域の人間関係が希薄になって、互いに見守り、助け合うつながりが弱まっていることだと思います。
昔は隣近所で、しょうゆの貸し借りやおかずのお裾分けを気軽にしていました。そんな親しい近所付き合いの中で、時には相談に乗ったり、愚痴を聞いたりして、家の中の様子が少し見えていたのだと思います。
それが、虐待の予防や早めの発見につながっていたのではないでしょうか。

誰もが当事者に

誰でも年を重ね、高齢者になっていきます。介護や認知症にどう対処するかは避けて通れません。
将来、自分が虐待する側にもされる側にもなる可能性があるんです。一人一人が高齢者虐待を、自分のこととして考えることが大切です。
昔のような親密な関係は難しいとしても、近所の家を気に掛け、見守る人が地域に一人でも多く居てほしいと思います。
その人たちと協力しながら、虐待のサインを地域全体で見逃さないような社会にしていきたいです。

【問い合わせ先】長寿支援課(電話番号0942-30-9038、FAX番号0942-36-6845)

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